
子供が親と離れ生活しなければならない。可哀想」という気持ちが先にたちます。
「いやいや、ろう教育はこうでなければできない。自分の子供だけではない同じ思いの父兄ばかりだ。頑張らなくては……」と心を新たにしました。
先ず園の方に掲子を連れて行って挨拶をすませ、お部屋を見せて頂きました。掲子の送った荷物はきちんと整理され、お部屋がきれいに飾られておりました。掲子はニコニコしながら見て廻り、私は少しホッとしました。
歩いて十分位のところにろう学校があり、そこで入学式と入園式が同時に行われました。そのときのことは余り覚えておりません。次にやってくる掲子とのお別れのことで、頭がいっぱいでした。いよいよお別れです。掲子は保母さんに抱かれて、「バッハーハー、バッハーハー」と、手を一生懸命に振っています。当時のテレビ漫画のケロヨンの真似です。私は何も言葉になりません。「うんうん、また来るからね」。バイバイと手を振りながら足を進めることができません。涙のグシャグシャの顔を見せられません。それでも一生懸命に頑張り、遠ざかって掲子の姿も涙と一緒に見えなくなるまで、足早に校門にと歩きました。
パスに乗り、後を振り向きながらろう学校をあとにしました。汽車、バス、タクシーと乗り継ぎ、やっと家にたどり着きました。家の中は朝出かけたまま。ぼんやりと座って別れて来た娘の顔を思いだし、主人の手前、声を出さず泣きました。
あの日から私は、「掲子も淋しいのを我慢して頑張っている私も強くならなければ。掲子の家庭は国なのだ。ときどき帰ったとき、やっぱり家はいいなあ、お母さんはいいなあと言われる
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